2019/04/01

どこかのアーセルトレイ設定

TRPG『銀剣のステラナイツ』を友人らと遊んだときに使った世界設定を、覚書としてまとめておきます。

! この設定のポイント
本設定は、これを用いたセッションで「ステラナイトたちが、大きな企みに為す術なく流され、踠く中で生まれる物語」を描くのを目的としています。そのため、次の事柄を設定しています。
  • 女神や統治政府は何を企んでいるのか? ロアテラは本当に悪なのか?
  • 促成培養槽はなぜ存在するのか?
  • ステラナイトたちは何に巻き込まれているのか?
…などなど。被造物や非人道的な人体実験といった要素が登場します。


※注意※

  • この記事は「どらこにあん」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『銀剣のステラナイツ』の二次創作です。
  • ルールブックの内容を大幅に曲解していますが、これはセッションを楽しむためであり、元の記載内容を批判したり、貶めたりする意図は一切ありません。
  • ルールブックの記載事項は、すべて「真実」として扱います。
  • 同じ「真実」であっても、視座によって見え方が変わる事がある、というのを前提としています。
  • これは考察ではなく「可能性の提案 」であり、「どこかにこんなアーセルトレイもあるかもしれない」程度の考えで書いています。

目次

1. アーセルトレイ統治政府の目的
2. 促成培養槽の存在
3. 人為変換体について
4. ロアテラの多面的解釈
5. 地球の滅亡と奪還
6. エクリプス、エンブレイス
7. 誓約生徒会 ──もう一つのアプローチ
8. ハンドアウト提案



1. アーセルトレイ統治政府の目的

まずは分かりやすいところから整理していきます。
ルールブックp.175の記述より、統治政府の目的は主に以下の2つであることが分かります。

① 人類とその文化の存続
② 地球の奪還

ここで既に統治政府の特異性が現れています。
現実世界にありがちな政府や統治者は、よく”成長”や”発展”を謳いますが、アーセルトレイ統治政府はこの点に全く重きを置いていないようです。
アーセルトレイ統治政府は、「地球を奪還し、そこに人類と過去の地球の文化を受け継ぐ」のを目的とした機関なのです。

また、統治政府について、次の要素も読み取れます。
  • 政府中枢には、旧地球崩壊時から今に至るまで、実際に何があったのかを知る者が召抱えられている。(p.165「ステラナイトの生活, 世界の真実」より)
  • 統治政府代表イデア=アリスは、表舞台に立つために用意された偶像である可能性がある。また、ステラナイトであったり、影武者がいたりする可能性がある。(p.189 NPCプロフィール より)
これらを認識した上で、次の項目へ移ります。


2. 促成培養槽の存在

ルールブック付属のリプレイにしれっと登場する「促成培養槽生まれ」という存在。p.83の「あなたの物語表」にも選択肢として出てきます。p.43のNPC設定では、促成培養槽という言葉は出てきませんが、デザインベビーが存在することが示されています。
リプレイから、促成培養槽から生まれた存在でも、そうでない人たちと同じように人権を認められ、生活しているように読み取れます。
単純に考えれば、人類絶滅を防ぐために造られているのでしょう。しかし、本当に理由はそれだけでしょうか。

公式リプレイに登場する、促成培養槽生まれのキャラクターは、エクリプスです。つまり元ステラナイトです。
このことから、促成培養槽生まれの存在でも、ステラナイトになれる(=星喰の因子が宿されている)事がわかります。

ここでルールブックp.167を参照します。
およそ100年前、旧地球世界が滅んだとき、ふたりの女神は「ほぼ絶滅同然の人類を存続させる」という願いを、星喰の因子を変換することで叶えたと云います。
よって、現在生きている人間は”星喰の因子変換体”の子孫です。

促成培養槽生まれの存在にも、星喰の因子が宿されているのならば、それは彼らが「星喰の因子から変換された存在」であることを示しています。
この100年の間に培われた「星喰の因子を人為的に人間に変換する技術」が、促成培養槽を可能にしているのです。

促成培養槽生まれと、そうでない人の差は、星喰の因子から人為的に変換された存在か、女神の願いにより変換された存在(の子孫)か、という事になります。

このことから、これ以降、促成培養槽生まれの存在を”人為変換体”と呼ぶこととします。


3. 人為変換体について

人為変換体が製造される目的は、主に次の2つが考えられます。
  1. 人類の絶滅を防ぐ
  2. ロアテラやステラナイトに関する研究の一環

1.について

これは前項で述べた通りです。人口を維持する繁殖以外の方法として人為変換体が生み出されていることは、容易に想像できます。

2.について

星喰の因子はロアテラの欠片です(p.167)。地球奪還を目指す統治政府にとって、旧地球世界滅亡の原因であるロアテラの情報は、是非とも収集したい筈です。ロアテラの欠片を扱う因子変換は、そのための手段となり得るでしょう。
また、ステラナイトも地球奪還のための大きな鍵です。デザインベビーが可能であることから、人為変換体は不確定要素が比較的少ないと考えられ、「どんな個体が優れたステラナイトとなるのか?」などといったテーマにおいては、人為変換体のステラナイトは恰好の観察対象となります。

促成培養槽を運用しているのは、元超巨大複業企業である統治政府(p.175)に他なりません。
ゆえに、人為変換体は政府の目的のために製造されている筈です。
そこで、この設定のアーセルトレイには、次の4タイプの人為変換体が存在する、と設定します。

① 特化α型人為変換体

イデア=アリスのように、政府中枢での働きを期待されてデザインされるエリートタイプ。人類社会存続のための存在。

② 特化β型人為変換体

ステラナイトとなるべく綿密な設計の上で生み出され、訓練される。地球奪還のための存在。

③ 汎用γ型人為変換体

一般市民として生きるタイプ。普段の生活で見かけたり、出会ったりする人為変換体の殆どが汎用γ型である。人類種の存続のための存在。

④ 汎用δ型人為変換体

①〜③の改良のための、使い捨ての実験体の総称。人権は無く、統治政府の研究所の中で生まれては死んでいく、未来への贄。



①について、更に詳細な設定 (大枠の設定には無関係な要素ですが、折角考えたので書いておきます。)
特化α型の個体名には、必ず「イデア=○○○」という文字列が含まれます。これは型式番号と呼べるものであり、例えば政府代表のイデア=アリスは「アリス型」という事になります。型式が同じ個体は外見も同じであり、表舞台に立つイデア=アリスとは別に予備のアリス型が複数人存在しています。
人前に出ることを想定したアリス型の他にも、文官タイプのルイス型やクリス型、研究者タイプのヘレン型──など、適当に名前を割り当てて設定すると良いかと思います。


4. ロアテラの多面的解釈

ルールブック上では、ふたりの女神によって、ロアテラは「生命の輝きを喰らう異世界の獣」と表現されています。これも一つの真実として、別側面からの解釈を試みます。
  • 人間は星喰の因子(=ロアテラの欠片)が変換された存在(p.167)
  • ロアテラ封印の楔とされる「願いの決闘場」は、各階層群に必ず1つ存在する(p.178)
  • 楔が解き放たれた階層群は消滅する(p.178)
以上の記述から、「人間だけでなく、各階層群もロアテラを変換したものである」と設定します。


ロアテラ

Lore Teller

物語の紡ぎ手, その力

この設定においては、現世界を構成するものこそがロアテラです

階層群の形を保つのにが必要なことから、ロアテラは「何もしなければ拡散し、消失する」という性質を持っています
また、人間の場合は楔についての言及がないことから、ロアテラを無限の力に変換し、繫ぎ留める””とは、人間の意志の力、即ち”願い”であるとして良いでしょう。



▪ 獣としての側面

生命の輝きを喰らう異世界の獣である、というのもロアテラの一側面です。

・ロアテラは、生命の輝きを喰らう

生命の輝き”が”願い”であるとすれば、これを餌として変換後の姿を持続させている現状の表現として、この部分は説明できます。

・ロアテラは、異世界の獣である

これを、ロアテラは命数のある生き物である事の表現として解釈します。そして、このとき「異世界」が指しているのは、”隣”や”他”といった並列の関係にある世界ではなく、”外側”と表現すべき上位世界と設定します。
旧地球世界やその他の平行世界、そして現在のアーセルトレイは、獣ロアテラの”内側”に存在する、細胞のようなもの──という設定です。

この設定においては、滅亡前の旧世界を構成していたものも、ロアテラです


5. 地球の滅亡と奪還

「ロアテラは命数のある獣である」「人類の生きる世界はロアテラの内に存在する」という要素から、旧地球世界滅亡の原因は「獣ロアテラの死」であると設定できます。
その死の時点から、世界を構成する全ては「何もしなければ拡散し、消失する」という性質を持ちました。そして、「願いによって変換され、繋ぎ留められる」ものとなりました。

(“獣”は寿命のあることの表現として捉えているので、その死の有様は「動かなくなり、躰はやがて腐り落ちる」というものとは限らない、としています。)

ふたりの女神は、その時の旧地球世界やその他の平行世界に生きる意志たちの「消えたくない」という願いによる「最初の変換体」と設定します。
それ故に、女神は人類存続には力を尽くしますが、地球奪還において主体的なのは統治政府の方です。

獣ロアテラが死を迎え、世界に拡散と消失が運命付けられた今、統治政府はどうやって地球を奪還しようとしているのか?


それは、「人為的な因子変換によるロアテラ再誕 」です。


前項で、ロアテラは願いによって無限の力に変換される、と設定しました。
消えかけの旧ロアテラの残滓を変換し、次代のロアテラを誕生させることが、統治政府の目論む”地球奪還”の手立てなのです。


6. エクリプス、エンブレイス

この設定におけるエクリプスやエンブレイスは、階層群を構成する星喰の因子が拡散・消失しようとする現象に、自身の因子が共鳴している状態の者を指します。

ステラナイトはロアテラの力を使って闘い、その中で「
歪みの共鳴」 によって歪みを蓄積すると、エクリプスになります。(p.155)
共鳴する」「エネルギーである」といった要素から、ロアテラの残滓は、
振動 に近い性質をもったものであると設定して良いでしょう。

「歪みの共鳴」は、自身の因子にロアテラ本来の振動を許すことによって、世界の外側に働きかけ、異界の力を引き出す行為です。
(p.156の歪みの演出例において怪物が出現している事にも繋がります。)
共鳴を行なった場合、シースの身体に傷跡が残るのは、その部分の変換が一度解けるから、と解釈します。
拡散の振動は、共鳴するほど更に共鳴しやすくなるものであり、”共鳴しやすさ”は「歪み」としてステラナイトに溜まっていきます。

ロアテラの残滓は、拡散し、減衰し、消滅する性質をもっています。
階層群を成すそれらを留めるを保つには、願いの力が必要です。
楔が弱まれば、階層群のロアテラの残滓の振動が増し、これに共鳴してエンブレイスが生まれます。
ステラナイトが「歪みの共鳴」を多用すれば、階層群のロアテラの残滓と共鳴し、エクリプスが生まれます。

ステラバトルは、階層群を留める楔に願いを注ぐ儀式であり、同時にエクリプスやエンブレイスの共鳴を止める行為でもあるのです。

(なぜ闘うと共鳴が止まるのか?─それは、ステラバトルが原則的に近接戦闘であることから、「鳴っている弦や鐘に触れると音が止まるのと同じ原理」として設定します。)

一度エクリプス化した者が再びステラナイトになれないのは、”共鳴しやすさ”が残っているため、それ以上ロアテラの力を使うと人に変換された現在の姿を保てなくなり、消滅するから、という理由になります。


7. 誓約生徒会──もう一つのアプローチ

ここまでの設定から、誓約生徒会の「機械仕掛けの仮面(p.190)」は、一度エクリプス化した者の”共鳴しやすさ”を抑えるための「制振装置」(= damper) とすることができます。
この設定では、機械仕掛けの仮面の正式名称を「SEF Damper」とします。
( SEF = Steller Eclipse Factor = 星喰の因子 )( 直訳…!)

仮面を受け取った者がエクリプス化すると、二度とステラバトルに挑むことができない(p.169)理由は、それ以上の共鳴は、仮面で抑えることが性能的に不可能だからです。

誓約生徒会は、この設定においては、統治政府と関係の深い研究機関としています。
旧地球時代の企業イデアグロリアから独立した企業が前身の組織で、人為変換体を使って地球奪還を目指す統治政府とは別に、(SEF Damper に代表されるように) 機械の分野から同じ目的にアプローチしています

誓約生徒会では、SEF Damper の技術を応用して、星喰の因子を組み込んだアンドロイドの製造も行っています。「因子制振殻 (SEF Damper Shell)」を内臓したそれらは、勿論、ステラナイトになることを想定して設計されています。


8. ハンドアウト提案

以上の設定をセッションに反映させるため、PCに適用するハンドアウトを提案します。

▪ あなたは特化α型人為変換体だ

特化α型は、アーセルトレイ運営のため、統治政府中枢での献身的な働きを期待されています。
しかし、彼らも時には、願いのために剣を取るのです。
その願いが己のためのものか、それとも世界のためなのか──このハンドアウトを受け取った俳優が決めてください。



▪ あなたは特化β型人為変換体だ

ステラナイトとなるべく生み出され、養成された存在が、ステラナイトとなったのだから、当然の事です。
鍛えられた動きは誰よりも鋭く、植え付けられた願いは誰よりも強く在らなければなりません。
そうでなければ、特化β型に存在意義などないのですから。



▪ あなたは汎用δ型人為変換体だ

汎用δ型がステラナイトに覚醒する事は、ほぼ不可能です。研究のために消費される身体であるそれらは、言葉すら覚えず、自我を持つ前に死ぬことが常だからです。
しかし、何かの事件や事故の折に脱走できてしまったり、廃棄された先でまだ己が生きていることに気付いたりして、研究所の外へ出たとしたら。願いを持つに至る個体もいるかもしれません。



▪ あなたは因子制振殻内臓アンドロイドだ

買われたのか、拾われたのか。予定通りの覚醒なのか、事故なのか。
いずれにせよ、ステラナイトとなった以上、機械でも闘わなくてはなりません。
機械として振る舞うのか、人間として生きるのかも、このハンドアウトを受け取った俳優に委ねられています。



▪ あなたは因子制振殻内臓アンドロイドを購入した

何か特殊なルートで誓約生徒会に接触し、因子精神殻内臓アンドロイドを購入しました。
おそらく目的は、ステラナイトとなるためでしょう。
ステラナイトの事をどこかで聞き及んだのか。それとも、パートナーを失ったのか。
相棒を購入してでも叶えたい願いがあったのか。それとも、闘い続けなければならない理由があったのか。
それは、このハンドアウトを受け取った俳優が決める事になります。



▪ あなたは人為的にエクリプス/エンブレイスとなった

因子変換体である人間は、その意志を楔として形を留めています。
何らかの手段を用いて意志を失わせるか、それが楔として働かない状態とすることによって、「楔を外す」ことが可能です。
(変換時のデータの残っている人為変換体であれば、この処置はより容易に行われるでしょう。)
楔を外された変換体は、闘いに敗れた階層群と同じく、消滅します。
その過程で、階層群を成すロアテラの残滓と共鳴し、エクリプス/エンブレイスとなります。
この方法でエクリプス/エンブレイスになった者は、闘いが無事に終わっても生き延びることはありません。
このハンドアウトを適用されるキャラクターは、汎用δ型と同じく、貴重なデータを遺して消滅する運命にあります。


これらのハンドアウトの組み合わせたり、他に設定を付け足したりして、様々な形で本設定をご利用いただけるかと思います。



記事は以上になります。長々とお読み頂き、ありがとうございました。

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