2019/04/07

inSANeシナリオ『風に乗る慟哭』

これは、1人のゲームマスターと6人のプレイヤーのためのinSANeシナリオです。
黎明期のボストンを舞台に、荒地の幽霊屋敷を探索したり、疑い合ったりして狂気を重ねていくゴシックホラー調の物語になります。


目次

シナリオスペック
レギュレーション
- ↓↓↓ - ここからGM用情報 - ↓↓↓ -
シナリオの概要
ハンドアウト
クライマックスフェイズ
マスターシーン
シーン表
シナリオのポイント

シナリオスペック

タイプ
: 対立型
プレイヤー人数
: 6人
リミット
: 3サイクル
使用ルールブック
: 1, 2
セッティング
: 黎明のボストン (19世紀前半)


レギュレーション

レギュレーションは、こちらのpdfを参照してください。


※ここから先は、GM用の情報となります。

シナリオの概要

19世紀前半のボストン郊外。荒れた沼地には、数十年前まで裕福な一族が住んでいた屋敷があったといいます。
既に朽ちた筈のその屋敷は、時折現れては旅人を喰ってしまうと噂されています。
今日、屋敷には6人の客が招かれました。
その中には、屋敷の主人やその妹、屋敷そのものである存在もいるのですが、彼らは記憶を失っています。
屋敷の探索を進めて登場人物の正体に辿り着き、それぞれの目的を果たそうと争い合うお話です。
NPCが登場しないため、GMはプレイヤーたちによって描かれる物語を、じっくりと楽しむことができます。

なお、狂気カードは次の24枚を使用します。
疑心暗鬼, 広がる恐怖, 依存, 疎外感, 盲目, 言葉を失う, パニック, いきすぎた想い, 血への渇望, フェティッシュ, 絶叫, 怪物, 記憶喪失, 現実逃避, 闇からの祝福, 潔癖, 恐怖症, 失踪, 暴力衝動, 狂信者,(ここまでルールブック1) 奇妙な欲求, 未視感, 愚行, 誇大妄想(ここまでルールブック2)


ハンドアウト

このシナリオには、3種類のハンドアウトが設定されています。


◼︎ PCハンドアウト

プレイヤーキャラクター用のハンドアウトです。表の面はレギュレーションで公開されています。
PCハンドアウトはこちら

ハンドアウトを配布する際、PC③にプライズ「アーカート家の情報」を渡すのを忘れないようにして下さい。
PC③はこのプライズの秘密を最初から所持しています。また、PC③以外のPCは、PC③の【秘密】を入手するまで、このプライズの存在を知りません


◼︎ 初期公開ハンドアウト

導入のマスターシーンで公開されるハンドアウトです。
屋敷の中に幾つもある部屋のうち、情報を入手できる箇所を提示します。
初期公開ハンドアウトはこちら
ハンドアウトに無い部屋がロールプレイ上で必要となった場合は、GMが有り得ると判断する限りにおいて任意に設定してください。


◼︎ フラグ式ハンドアウト

他のハンドアウトの公開やPCによる調査判定等の条件を満たすと公開されるハンドアウトです。
このシナリオではNPCの操作が無いので、GMの仕事は主にこのハンドアウトのフラグ管理になります。
フラグ式ハンドアウトはこちら
こちらのフラグ一覧をマスタリングにお役立て下さい。


クライマックスフェイズ

ハンドアウト「地下室」の【秘密】が公開された時点、もしくはリミットの3サイクルが経過した時点の状況によって、迎えるクライマックスが異なります。
クライマックス条件整理表


◼︎ クライマックスA

発生条件

ハンドアウト「PC①の選択」「PC⑤の真実」「PC⑥の真実」の全てが公開されないまま、ハンドアウト「地下室」に対する調査判定が成功するか、3サイクル経過する。
または、ハンドアウト「PC⑤の真実」「PC⑥の真実」の2つが公開されず、ハンドアウト「PC①の選択」において 2) が選択された状態で、ハンドアウト「地下室」に対する調査判定が成功するか、3サイクル経過する。

内容

クライマックスフェイズは発生しない。
ハンドアウト「PC①の後悔」が公開された後、GMが後述するマスターシーンを読み上げてシナリオ終了となる。
PCたちは屋敷から解放される。
PC①は状況の分からないまま、PC⑤,⑥は自らの正体に気付かないまま、ボストン近郊で暮らすことになる。
しかし、彼らの本質は変わらない。近いうちに再び怪異が起こるだろう。



◼︎ クライマックスB

発生条件

ハンドアウト「PC⑤の真実」「PC⑥の真実」の2つが公開されず、ハンドアウト「PC①の選択」において 1) が選択された状態で、ハンドアウト「地下室」に対する調査判定が成功するか、3サイクル経過する。

内容

PC①だけが怪異側としてクライマックスフェイズを行う。(ただし、PC①は「属性: 怪異」にはならない。)
地下室の一角に存在する木製の棺を開けることで、PC⑤は記憶を取り戻し、怪異側となる。(しかし、PC①の味方をするかどうかはプレイヤーの自由!)
クライマックスフェイズにおいて、PCは自らの手番を消費して「棺を開ける」行動を選択することができる。
「棺を開ける」は判定の必要なく成功し、これによってハンドアウト「PC⑤の真実」の公開条件が満たされ、適用される。
また、各ラウンドの開始時に、PC②, ③, ④の【生命力】に[ラウンド数+1]点のダメージが入る。この効果は、PC⑥の【生命力】が0になると失われる。

終了条件

クライマックスフェイズの終了条件は以下のいずれかとなる。

  • 怪異側もしくは人間側のPCが全て行動不能となる。
  • 儀式「怪異の撃退」が完遂される。(※棺を開けた場合のみ )



◼︎ クライマックスC

発生条件

ハンドアウト「PCの真実」が公開されず、ハンドアウト「PCの真実」が公開された状態で、ハンドアウト「地下室」に対する調査判定が成功するか、3サイクル経過する。

内容

PC⑤が自らの正体に気付かないままクライマックスフェイズが開始する。
地下室の一角に存在する木製の棺を開けることで、PC⑤は記憶を取り戻す。
クライマックスフェイズにおいて、PCは自らの手番を消費して「棺を開ける」行動を選択することができる。
「棺を開ける」は判定の必要なく成功し、これによってハンドアウト「PC⑤の真実」の公開条件が満たされ、適用される。

終了条件

クライマックスフェイズの終了条件は以下のいずれかとなる。

  • 怪異側もしくは人間側のPCが全て行動不能となる。
  • 儀式「怪異の撃退」が完遂される。



◼︎ クライマックスD

発生条件

ハンドアウト「PCの真実」が公開され、ハンドアウト「PCの真実」が公開されない状態で、ハンドアウト「地下室」に対する調査判定が成功するか、3サイクル経過する。

内容

PC⑥が自らの正体に気付かないままクライマックスフェイズが開始する。
各ラウンドの開始時に、PC②,③,④の【生命力】に [ラウンド数+1] 点のダメージが入る。
ハンドアウト「PC①の選択」において 2) が選択されていた場合には、PC①にもダメージが適用される。
この効果は、PC⑥の【生命力】が0になると失われる。

終了条件

クライマックスフェイズの終了条件は以下のいずれかとなる。

  • 怪異側もしくは人間側のPCが全て行動不能となる。
  • 儀式「怪異の撃退」が完遂される。



◼︎ クライマックスE

発生条件

ハンドアウト「PCの⑤真実」と「PCの⑥真実」が共に公開された状態で、ハンドアウト「地下室」に対する調査判定が成功するか、3サイクル経過する。

内容

満遍なく探索をすれば、大抵の場合はこのクライマックスに行き着く(はず)。
追加の処理は発生せず、通常のルール通りにクライマックスフェイズを行う。

終了条件

クライマックスフェイズの終了条件は以下のいずれかとなる。

  • 怪異側もしくは人間側のPCが全て行動不能となる。
  • 儀式「怪異の撃退」が完遂される。



マスターシーン

このシナリオにおいて、次のマスターシーンが発生します。(見づらい場合: pdf版)


◼︎ 導入フェイズ

ボストン郊外のそこには, ただ荒れ果てた沼地が広がるのみだった.
その筈なのに, 君たちは今, 古びた屋敷の中にいる. 埃と黴の臭い. くすんだランプが頼りなく室内を照らしている. 吹き荒ぶ風は今や音だけが壁越しに届き, コートを脱いでも体温を奪われることはなさそうだ.
しかし, それに安心している場合ではない. 何故, いつの間に, 君はこの屋敷に入ったのだろうか?一体どうして, 無い筈の屋敷に居るのだろうか?そして–––君の目の前で, 互いを観察している5人は, 何者なのだろうか?
PCは, 指定特技《時間》で恐怖判定をおこなう.



◼︎ リミット終了時

地下へ続く階段の方から、重々しい扉が開く音が聞こえる……(→適宜、状況に応じたクライマックス描写に繋げる。繋げる先に扉の音の描写が入っている場合は省く。)



◼︎ クライマックスA突入時

耳に障る音とともに, 地下室の扉が開いた. 途端, 君たちは凍えるような冷気と耐え難い悪臭の風に呑み込まれ, 割れるような悲嘆の叫びが頭に響き ───意識が途切れていた.
暗い地下室の片隅に質素な棺の置かれている光景が, なぜか脳裏に焼き付いている……. (ハンドアウト「PC①の選択」が公開されていない場合は, ここでハンドアウト「PC①の後悔」を公開する)
荒地を吹く冷たい風に, 君たちは起こされるだろう. 辺りを見回しても, 屋敷の影も形も見当たらない.
ただ, あの屋敷で共に時を過ごした5人が, 同じように呆然としているだけだった.



◼︎ クライマックスB突入時

入った覚えもないのに, 君たちは今, 冷え切った石造りの地下室に集まっている. 扉は閉ざされており, 立ち込める腐臭は君たちの精神を蝕む. ただ一人, PC①だけはそれを意に介さないようだった.
部屋の片隅に置かれた質素な棺から聞こえる陰鬱な啜り泣きが, そう広くない部屋に木霊している. 暗闇の中に, こちらを嘲笑するような顔が見えた気がした.



◼︎ クライマックスC突入時

腐臭の漂う地下室は, 灯りも無いのにぼんやりとその様子が浮かび上がっていた. 入った覚えもないのに, 君たちは今, 冷え切った石造りの地下室に集まっている.
部屋の片隅に置かれた木製の棺から, 陰鬱な啜り泣きが聞こえていた.



◼︎ クライマックスD突入時

地下室の扉が, 耳障りな音を立てて開いた. 途端, 君たちは冷気と悪臭の風に呑み込まれ, 強引に部屋の中へと引き摺り込まれる! バタン!──大きな音に振り返ると, 扉が閉ざされている. 手に持った蝋燭は消えていた.
どこからか, こちらを嘲笑するような声が聞こえてくる……



◼︎ クライマックスE突入時

地下室の扉が, 耳障りな音を立てて開いた. 途端, 君たちは冷気と悪臭の風に呑み込まれ, 強引に部屋の中へと引き摺り込まれる! バタン!──大きな音に振り返ると, 扉が閉ざされている. 手に持った蝋燭は消えていた.
冷え切った石造りの部屋が, 灯りも無いのにぼんやりと浮かび上がった.



シーン表

このシナリオにおいては、次のシーン表を使用してください。(見づらい場合: pdf版)

2 風鳴りがいやに耳につく. 音程の狂った笛を何本も, 至近で好き放題に鳴らされているような感覚だ. ああ, うるさい, うるさい, うるさい!───思わず壁に打ち付けた拳の痛みに, 自分が叫んだ事を知った.
3 蝶番の軋む, 鋭い音が耳に突き刺さった. 長いこと開かずの間になっていた部屋の, 冷たく湿った空気が独特の黴臭さを伴って漂う.
4 踏み込んだ部屋は, 濃密な闇に満たされていた. 風の吹き止んだ合間に, 低い不明瞭な音がどこからともなく聞こえて, 腹の底に不安を溜めていく.
5 壁に掛けられた絵画が目に留まる. 画家の妄念をそのまま筆に乗せたような抽象画だ. これほどまでに, 徹底的なまでに具象性を排除した絵が人間に描けるのか. あまりに純粋な筆致に畏怖の念すら覚える.
6 ごとり. 背後から重たい音が聞こえた. 振り返ると, 青銅の立像がこちらを向いている. 果たして, 最初からこの向きだっただろうか…?
7 暖炉に火が灯り, 揺り椅子やソファで屋敷の住人が談笑する. 嘗てあっただろう, 暖かな光景───幻想は束の間に, 荒れた一室が眼前に広がった.
8 扉を開けた途端, 思わず咳込むほどの大量の埃が舞い上がった. 部屋の中, すべてが白い埃に厚く覆われている.
9 自分の家もいつか, このように捨て置かれ, 忘れ去られてしまうのだろうか. 荒れた廃屋は, 陰鬱な想像を煽った.
10 危ない! 床の段差で躓き, 転ぶところだった. 先には, こちらへ鋭利な槍を構える甲冑姿の立像がある. もし転んでいたら, どうなっていたか...
11 ​外では風が吹いているようだ. ガタガタと, 嵌め殺しの窓が音を立てる. 生地の綻びた鈍い色のカーテンが時折, 隙間風に揺らめいている.
12 周囲は暗い. 匂い立つ濃厚な土. 冷たく湿った空気. 生きたまま土に埋められている!怖い. 寂しい. 苦しい……誰か助けてくれ!! ───気が付けば, あなたは屋敷の中で呆然としていた. 酷い幻覚をみたものだ.


シナリオのポイント

このシナリオは、エドガー・アラン・ポーの短編小説『アッシャー家の崩壊』を元にしています。
シナリオの舞台設定は小説に描かれているよりも数十年後であり、小説の主人公はPC③の祖父にあたります。ロデリック・アッシャーはPC①のローガン・アーカート、その妹はPC⑤という設定です。

「ゴシックホラー」を謳っていますが、実のところ、元ネタがゴシックホラーであるだけで、シナリオ自体は「標準的な屋敷探索もの」だと思います。

6人のPCの立ち位置は以下の通りです。
◼︎ PC①

過去と現在、人間と怪異の間で揺れ、重要な決断をするキャラクターです。
手に入れる情報や関わったキャラクターによって、選ぶ道は変わるでしょう。


◼︎ PC②

怪異に巻き込まれた被害者①です。
ハンドアウトではプライズを集めることを推奨しており、中心となって探索を進める役割を期待しています。


◼︎ PC③

この物語に語り手がいるとすれば、それはこのPC③という事になるでしょう。
最初から重要な情報を所持しているPC③が、どのような姿勢でこの怪異に向き合うのかが、セッションの方向性を左右します。


◼︎ PC④

怪異に巻き込まれた被害者②です。
ハンドアウトでは攻撃的な性格であることを推奨しており、人間側の重要な戦力となることを期待しています。


◼︎ PC⑤

おそらく最もロールプレイの難易度が高いハンドアウトです。
ロールプレイの苦手な方がこのハンドアウトを選択した場合、PCの性別を女性にすることを事前にそれとなく示唆しておいて良いかもしれません。
自らの真実を入手したときの感情の変化がロールプレイ上の見せ所となります。


◼︎ PC⑥

ラスボス枠です。
桁違いの性能で暴れ回るのを楽しむことを推奨します。

また、このシナリオは恐怖判定の機会が多く、「狂気の濁流」が起こりやすい構造になっています。 濁流が起こった場合、その時点で怪異側にいたキャラクターが優位となるエンディングを描写してください。
シナリオは以上です。エンディング及びエピローグについては、それまでの物語を踏まえて自由に描写してください。

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